2019年05月20日
奥多摩暮らしのラスボス、ムカデ討伐記
暗黒の時代が訪れた。絶望の季節。今年もいよいよ、あいつが姿を現したのだ! 床下より這い出づる、万(よろず)の足を持ちし者。その名はムカデ……!
この記事は、奥多摩に暮らす者の宿命ともいえるムカデとの闘いを描いたものだ。なお、ムカデの実物画像は非常に恐怖心を煽るものであるため、一切掲載していない。安心して読み進めていただきたい。
奥多摩暮らしのラスボスはGではない
きらびやかな大都会にお住まいの諸兄にとって、家の中に現れる恐ろしい虫と言えばもちろんG(注)であろう。しかし、奥多摩ではGとの遭遇率は低い。理由は定かではないが、平均気温が低いためと言われている。
我が家は隙間だらけで這う虫があらゆる場所から侵入するが、Gに遭遇するのは、特に対処していないにも関わらず、せいぜい年に1~2回程度のものだ。
そのかわり、奥多摩では都会で見ることのない色々な虫たちと遭遇する。その中で我が家で最も恐れられているのがムカデだ。ムカデは怖い。見た目がグロテスクなだけではなく、人間を噛む。そして噛まれたらメチャメチャ痛い。
ムカデは寒さに弱く冬場は現れないが、暖かくなるとジャンジャン出てくる。奥多摩は自然が豊かだから野山にいるような虫はどうしても多い。奥多摩のような田舎で暮らす以上、これだけは覚悟をしなければならないのだ。
注:G=ゴキブリ。この名称を連呼するとおぞましい気分になるのでイニシャルで表現しています。
こんなに怖い!ムカデの恐るべき生態
ムカデがどれだけ恐ろしい生き物なのか、その特徴を簡単にまとめてみた。
1. ムカデは素早い
ムカデは普段はじっとしていることが多いが、獲物を捕らえる時や逃げる時にはとても素早く動く。無数の脚の波立ちや体のくねりがグロテスクだ!
2. ムカデは噛む
ムカデは視力が弱いので触角を頼りに獲物を捕らえる。だから何が厄介かというと、人間がいても平気で近寄ってくるのだ。そして触角が触れると即座に噛む! 大体無差別に噛む! ギザギザハートかよ!
3. ムカデは有毒
ムカデは神経毒を使う。前足で獲物を捕らえると、毒を使って殺してしまう。毒の強さは、人命に関わるほどではないが、神経毒ゆえに強い痛みを起こす。しかも痛みが続く!
4. ムカデは潜む
ムカデは狭い隙間を好み、石や木の葉の下などに隠れている。家の中でも同様に狭い隙間に隠れる。その隠れ場所は、例えば靴の中、例えば服の中、例えば布団の中――。もはや人類に逃げ場なし!
嫌だったムカデとの遭遇シーン5選
奥多摩で暮らし始めて4年。ムカデとは色々なシチュエーションで遭遇してきた。その中でも特に衝撃的だった出会い方をランキング形式でご覧いただこう。
第5位:恐怖のシルエット
ある日パソコンでネットニュースを見ていると、どこからか奇妙な音が聞こえてきた。キチキチキチ、キチキチキチ。よく見ると、目の前にあるレースのカーテンの裏側を大きなムカデがゆっくりと登って行こうとしていたのだ。陽光に照らされたシルエットが、悪魔的なものを感じさせた。
第4位:廊下の照明が点かない……?
気が付くと、廊下の照明が点かなくなっていた。なんとなくスイッチの感触が鈍い。古いスイッチだし、壊れたのかと思いカバーを開けてみると、内部の電極の間にムカデが挟まって死んでいた。スイッチ部分に発生するわずかな熱に誘われたらしい。っていうかどこから入ったの?
第3位:妻からのブービートラップ
妻がトイレのドアノブに飾りを付けた。目にも優しいフェイクグリーンのリースだ。ある時僕がトイレに行こうとしてドアノブを掴むと、手に触れたリースからボトリと落ちるものがあった。落下と同時に走り始めたのは大きなムカデだった。リースはソッコーで捨てた。
第2位:今日も元気におはよう!
夜になり、押入れから布団を出して床に敷いていた。敷布団、敷きパッド、タオルケットと重ねていき、最後に掛布団を広げたその時、布団の隙間からムカデが元気に飛び出してきた。ムカデは夜行性だから、たった今目覚めたのだろうね。夏場は布団に入るのが怖い。
第1位:トコロテン方式で……
少し肌寒い梅雨の朝のこと、出かけようと思って上着を羽織った。袖を通した瞬間、一瞬指先に冷たいものが触れ、右袖の中からムカデが飛び出してきた。夜の間、上着を床に放り出していた僕が悪いというのだろうか。もはや服を着るのも怖い。
徹底抗戦!我が家の対ムカデウェポンに刮目せよ
このように容赦ない攻撃を仕掛けてくるムカデに対して、我々人類も手をこまねいているわけではない。我が家のムカデ対策に採用された数々の対ムカデウェポンをご覧に入れよう。
ムカデ忌避剤
ムカデの嫌うヒバという植物の匂いを放ち、ムカデの侵入を水際で食い止める。家中のムカデが侵入しそうな場所に設置してある。ホームセンターでは粒状の毒餌剤が売られているが、我が家には猫がいるため、万一の誤食を防止する目的で使用を控えている。
スプレー式ムカデ忌避剤
ムカデの嫌うヒノキの成分により室内空間からムカデを遠ざける。毎夜、就寝前になると妻が家中に撒いて撒いて撒きまくる。部屋の中がログハウスみたいに凄くいい香りになる。
冷凍殺虫スプレー
ムカデは通常の殺虫剤をかけてもなかなか死なない。そこで採用したのがこの冷凍殺虫スプレー、通称「冷凍ビーム」だ。これを使うとムカデも一瞬で凍り付いて死ぬ。1本800円くらいするのでコスパの悪さが欠点。
「ムカデより怖いのは私たち人間ね。」
捕獲装置
ムカデをはじめとする様々な虫を手を触れずに捕獲する装置。目標を全方位から取り囲み、確実に捕獲可能。通常は冷凍ビームによる沈黙後に使用する。
布団収納袋
押入れの中は安全ではない。床板に隙間があるからだ。恐らく、閉ざされた狭い空間なので通気性を高めるために敢えて隙間が設けられている。だから暖かい季節になると、布団は収納袋を使って格納する。まあまあメンドイ。
蚊帳
ムカデの脅威から人類を守る最後の砦。眠っている間にムカデが布団の中に入ってきたらもうお終いだ。そんなことを考えたらおちおち眠っても居られない。この蚊帳は袋から出してポンっと広げるだけで手軽に使える。そして床にも生地がついているので死角がない。奥多摩暮らしの必需品だと思う。すぐに猫に穴を開けられるので、毎年買い替えている。
人類はムカデに怯えながら生きるしかないのか?
このように様々な対策を練ってはいるものの、結局毎年ムカデに遭遇する。でもそれは当然のことで、なぜならばここは奥多摩、山の中なのだから。もともとムカデやほかの野生動物たちの領域に、僕たち人間が家を建てているのだ。ムカデから見たら人間の方が侵入者。だから、初めにも書いたが、ムカデとの遭遇は奥多摩で暮らすものの宿命なのだ。
なんだかんだ言って、何年も住んでるうちにムカデにもそれなりに慣れてきた。出現した時も、じつは大して驚きもしなかった。最終的には人間が適応するしかなくて、家にムカデを出なくするとか、環境を全部変えちゃおうなんて言うのはとても傲慢な発想なんじゃあないだろうか。
田舎で暮らすということの意味をもう一度よく考えながら、今日は眠ることにする。
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