Diary

おくたま日記

2020年03月18日

4年暮らしてわかった、奥多摩の春夏秋冬それぞれの嫌なところ

奥多摩に移住してから4年半が過ぎた。

奥多摩での暮らしはおおむね楽しいことばかりで不満はあまりないのだけれど、いいことばっかり書いても何だか嘘くさいと思うので、今回は奥多摩を思い切りディスってみようと思う。

テーマは奥多摩の四季。いま僕は奥多摩で5度目の春を迎えている。移住したのが秋だったので、夏を4回、秋と冬は5回ずつ越えてきた。

それぞれの季節ごとに辛かったことや嫌だったことをピックアップするので、どうか最後までお付き合いいただきたい。

奥多摩の春のココが嫌だ!

春。雪が解け、寒さが緩むにつれ、草木が芽吹き始める季節。

長く眠っていた山河に命の歌が聴こえ始める希望に満ちた瞬間。僕の所にもしっかり届いてる。新しい命。黄色いやつがたんまりとね。

そう、奥多摩は花粉の故郷なのだ。

奥多摩町の面積は225.53平方キロメートル。その9割以上を占める山林の約半分がスギとヒノキの人工林とされる。これは東京ドームの2000倍の面積である。

……ダメだ、全然ピンとこない。比較対象をもう少し大きくしてみて、東京ディズニーランドで計算すると約200倍になる。

想像してほしい。ネズミの国200個分の森林から、あたたかい春風に乗って大量の花粉が一気呵成に飛び出し、空を、町を覆いつくすのだ。

雨後の気温の高い日などには、揺れる木々から湧き上がる黄色いモヤが目撃されるし、谷間は黄色い霧に包まれていることも少なくない。これは決して遠い国のおとぎ話なんかではなく、目の前で起きている現実なのだ。春は一歩も外に出たくない。

ひたすらに夏を待ちわびるのみだ。

奥多摩の夏のココが嫌だ!

夏。それは全ての命が躍動し燃え上がる、情熱の季節。

躍動した命は家の中にもなだれ込んできて、人類を恐怖と絶望の淵へと叩き込む。

蚊! ハエ! 蛾! ムカデ! ヤスデ! ハチ!

おびただしい数の虫の群れが、地から空から迫りくる! どれだけ気を付けていても、いつの間にか家の中にいるのが奴らだ。床下、天井裏、家具の裏側。想像するだけでも恐ろしいのだけど、事実そこにいるのだから仕方がない。

中でも厄介なのが、ムカデやハチなど人間に大ダメージを与えてくる部類の虫だ。ムカデなんて接触すればすぐさま咬んでくるので全く手に負えない。そんなわけで夏の我が家では蚊帳がマストアイテムなのである。

毎晩寝る時間になると蚊帳を張り、内側に布団を入れる。朝起きたら布団を畳むのだが、押し入れの床下にある隙間が屋内外の緩衝地帯となっているので、布団をそのまま入れるのは危険だ。だから布団収納袋を毎日使うのだけど、これが実にめんどくさい。

夏の嫌なところはそれだけではない。庭の草木がじゃんじゃん伸びる。ほんの少しでも油断すれば雑草が大人の背丈を越えてしまう。それで汗だくになって草刈りをしているとハチに刺されたりするのだから本当に嫌だ。

一昔前なら奥多摩の夏は涼しく、冷房なしで平気だったと聞く。しかし段々と暑い日が増え、最近では避暑地としての評価もイマイチの様子。夏の奥多摩なんて良いことがひとつもないぜ!

ただただ秋を待つばかりだ!

奥多摩の秋のココが嫌だ!

秋。それはセンチメンタルの季節。

景色が急速に色づき、実り、やがて褪せていく。あんなにも強かった日差しは鳴りをひそめ、収穫の喜びとともに、来るべき冬への備えの時。高くなった空を染める真っ赤な夕日を見て胸が締め付けられるのは、人類の遺伝子に刻まれた本能としか言いようがない。

……否。

違う。秋を迎えた奥多摩民が胸を締め付けられているのはもっと現実的な、具体的な事だ。

まず虫。夏から引き続いて出現し続ける虫たちは一向に減る気配がない。それどころか、暖かい環境を求めて増々屋内に滞在しがちな気がする。昆虫のなかで一番人間を殺しているスズメバチが多く出現するのも秋だ。

涼しくなってくると、夏にはさほど見られなかったカメムシも増えてくる。どうやらカメムシは天井裏などの暖かい場所で越冬するらしい。

ちなみに奥多摩の家庭には普通、各部屋にガムテープがひとつずつ置かれている。なぜいきなりそんな話をするのかというと、奥多摩町民はカメムシをガムテープで挟んで封じ込めるのだ。そうすると匂いが漏れないで済むから。

虫以外にもうんざりすることがある。それは落ち葉だ。玄関先、駐車場、いたるところに木が生えているから、秋になると落ち葉がじゃんじゃん降ってくる。掃き集めるとゴミ袋がアッと言う間にいっぱいになる。そんでゴミの分別を調べると落ち葉は可燃ゴミで、有料の可燃ゴミ袋に入れて出すことになっているのだ。

おいおいマジか。膨大な量になるぞ……。しかも今日きれいに片づけても、どうせ明日にはこんもり降り積もっているのだ。

外を歩けばズボンの裾が引っ付き虫だらけになるし、国道を猿の親子が歩いてるし、やっぱり秋なんてロクなもんじゃない。

冬の到来が待ち望まれる。

冬の奥多摩のココが嫌だ!

冬。冬については四の五の言う必要はないだろう……。

 

 

寒い。

 

 

とにかく寒い。安定の寒さ。夏の涼しさは失われたくせに、冬の寒さは健在の奥多摩町。ちょっと都内各所の平均気温を比較してみよう。

 

東京都統計:平成29年観測地別平均気温より(奥多摩の観測地は小河内)
奥多摩 八王子 府中 千代田
1月 1.7 3.8 4.8 5.8
2月 2.8 5.1 6.1 6.9
3月 4.1 6.9 7.7 8.5
4月 11.0 13.6 14.0 14.7
5月 16.7 19.2 19.5 20.0
6月 18.6 21.3 21.7 22.0
7月 24.0 26.8 27.1 27.3
8月 23.0 25.7 26.1 26.4
9月 19.3 22.0 22.3 22.8
10月 13.8 16.1 16.3 16.8
11月 7.8 10.2 10.9 11.9
12月 2.7 4.5 5.3 6.6
年間 12.1 14.6 15.2 15.8

これは月ごとの平均気温なのだが、都内の他地域と比べて明らかに寒いことがわかる。年間平均で見ても、都民の皆様のあいだでは寒い場所の代名詞であるはずの八王子より2.5℃も低い。千代田区(皇居周辺)との差は実に3.7℃だ。

その結果どうなるかというと、暖房費がやたらとかかるのである。具体的な数字は出さないが、我が家の場合ガス代と電気代は夏場の2倍程度かかる。灯油に至ってはもはや一冬でどれだけ買っているか分からない。

とにかく、電気やガスの料金を払う時にいつもすごくガッカリするのが、奥多摩の冬なのだ。ストーブ点けるのも嫌になる。といってケチると命に関わるので、使わざるを得ない。

そんな心臓を握りしめられるような思いで部屋を暖めると、それがためにカメムシが集まってくるという不条理。

ああ、はやく、春よ来い。

それでも僕は住んでいる

こうして改めて考えてみると、どうも奥多摩暮らしの敵は主に虫っていうことらしい。奥多摩移住者と話していても、虫の話になると止まらなくなることが多い。ネイティブ相手でも似たようなものだ。

花粉、虫、雑草、落ち葉、寒さ。要するに自然がもつありふれたものが人間にとって障害で、それらから隔絶、防御しているのが都市ということだろう。コントロール不可能な自然の在りようを受け入れられないと、もしかして田舎暮らしはキツイのかも知れない。

奥多摩の四季の嫌なところを書き連ねてみたが、それでも僕は奥多摩に住んでいる。なぜかと言えば、ここに書いた事が全てではないからだ。結局のところ、良いことも悪いことも、どこで暮らそうと両方あって当たり前なので、悪いことには日常あまりフォーカスしない。

悪い事ばかりを数え始めるとどこに行っても暮らせない。目の前の幸せが見えないなら、どこへ行っても幸せは見えない、というわけだ。

皆さんも、このようにして時々自分の住環境を見つめなおしてみてはいかがだろうか。もちろんいいところもセットにして。

最後に、奥多摩の四季の良いところが書かれたこちらの記事を紹介して締めくくりたいと思う。

Writer

この記事を書いた人

スー

2015年、なんとな~く奥多摩に移住。現在、妻の営む整体サロンの片隅で、電動バイクレンタルショップをこっそり営業中。少年ジャンプと科捜研の女がイキガイのシガナイ中年。

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