Diary

おくたま日記

2020年03月30日

有害鳥獣駆除に従事している私が獣害について思うこと、提案したいこと

オクタマニアです。有害鳥獣駆除に従事しています。今回はちょっと真面目に、獣害に対しての私見を書きます。けっして有害鳥獣駆除を請け負っている猟隊の意見でもなく、町としての意見でもなく、私見です。

獣害、笑えません。

農作物は悉く掘られ食べられ、農業従事者の意欲を削いでいきます。林野では鹿やクマが樹皮を剥ぎ木が枯れています。観賞花なども被害にあっています。

都市部の人も無関係ではありません。山野部で獣害が進み荒れた山ができると、風雨により土砂が流出し水源の確保が難しくなったり、河川の氾濫に繋がります、農作物だけでなく美味しい海の魚や貝も食べられなくなるかも。

ではどのようにしたら獣害は減らせるでしょうか。理想的な防除のステップこの4つです。

(1)獣と人の住みわけ
(2)適切な森の管理
(3)絶対数の削減
(4)1~3の効果の確認と是正

(1)~(4)の優先順位はあまり無く、同時に行えるのが理想ですが、とりあえず被害を減らすために何からやっていけばいいかで並べています。

(1)獣と人の住みわけ

ぶっちゃけ、鳥獣被害は困ってる人が対策をすれば良いのです。被害に遭われている住民が被害をもたらしている動物が何か観察し、電気柵や追い払いの花火、罠の設置(農業従事者は猟期を除く農地・私有地内なら罠をかけれます)等を実施し防除すべきだと考えます。

駆除隊は防除のプロではありません(私は防除の勉強もしてます)し、駆除隊が農地に付きっ切りで獣が出る度に駆除することも現実的ではありません。奥多摩の農地の多くは住宅地に近く、銃の使用も限られてしまいます。

なのでまずは個が個の農地を防除し、自治会単位などで当番を決め順番に夜警(追い払い)をするなどが考えられます。困っている人同士お金を出し合って罠を購入するのもアリですね。防除によって獣と人の住みわけができます。

ここで公(町)がすべき働きは、「防除の知識を得る講習会を行う」です。奥多摩町では既に電気柵の購入の助成金を出しています。素晴らしい取り組みだと思いますが、お金を出すっきりな気がして惜しいと感じます。電気柵の正しい設置の仕方を知らないと効果が薄いです。正しい防除の仕方を知る専門家を呼んで、広く住民に知らせることが被害を減らすことに大きく寄与します。

(2)適切な森の管理

住み分けた獣たちのために「豊かな森」が必要です。そのために適切な森の管理が必要になります。奥多摩の林野に入っておりますと、とてつもなくスギ・ヒノキの数が多いです。

それも間伐されず真っ暗な林で、実が成らず、下草は生えず、土も豊かでないため、動物の食べるものがありません。だから人里に出て食べるんですね。それも無くなると樹皮を食べたり。

スギ・ヒノキは殆ど人が植えたもので、人が動物達の居場所を奪ったとも言えます。なので人の手で動物達も暮らせる森をつくるのがヒトの役目でもあります。

針葉樹の保水力は落葉樹と変わらないというのが最近の研究で明らかになったそうですが、落葉によって土が作られることや実がなることから、スギ・ヒノキではなくブナ・ナラ等の落葉系で実のなる木に変えていくのが理想です。紅葉などの副次的効果もありますね。

ここで公(町・国)がすべき働きは、「スギ・ヒノキのブランディング」です。スギ・ヒノキの価値が高まれば関連事業者の収入が増え伐採が進んでいきます。いま林業は助成金なしで食える業者は数パーセントしかいないと聞きます。公は「林業を食わすために金を使う」のではなく「林業が食えるようになるため金を使う」べきです。

都のほうでは多摩産材を利用すると助成金が出る仕組みがあり、多摩産材の利用につながりとてもいい取り組みだと思います。でもまだ甘い。それは「助成金がもらえるから多摩産材を使う」だけであり、多摩産材の価値を上げているとは言い難いからです。

コンペを実施し優れた新しいプロダクトに賞金を出したり、スギ・ヒノキの利用の研究にお金を使うほうが健全であると考えます。

町は間伐材ペレットをもえぎの湯のボイラーに利用してるみたいですね、良い取り組みだと思います。木ペレットの発電機もあるので、新役場を建てる際は導入し電力を自活し森を利用し災害にも強い町づくりとかどうでしょう。

私たちも薪ボイラや薪ストーブを活用するようになれば、木の需要が高まり林業の活性化に繋がると考えます。

(3)絶対数の削減

さあ、やっと私の出番です。獣の絶対数の削減。人里から林野に追い払った獣を減らしていきます。豊かな森が出来たとはいえ、そのままでは獣の数が増えいずれ森からオーバーフローし同じ道を歩むことになります。

現在は「巻き狩りによる銃猟:くくり罠・箱罠=8:2」くらいの割合で捕獲しています。手前味噌ではありますが、現在の捕獲方法に大きな問題があるとは思っていません。

もし(1)の対策が実施され始めれば、より効果的に捕獲が可能になると考えます。昨今の狩猟ブームの流れか駆除隊従事者に若い人も増え、継続可能なのではないかと思っています。

ただ注文をつけるなら「新しい技術の利用」が必要かと思います。ドローンでの探索・搬出、LPWAを活用した罠通知システム・遭難対策、相互位置がわかるGPS機器の利用、捕獲MAPの作成と共有等をすればより効率的に効果的にかつ安全に駆除ができると考えます。また後進の育成も楽になり、より継続可能な取り組みになると考えます。

(4)1~3の効果の確認と是正

人間はよく間違えます。オオカミを絶滅させたり、鹿を画一的に保護したら増えすぎたり、外来生物を離したり、林業が儲かると踏んだらスギを植えまくったり。

なので(1)~(3)の対策も「今は正しいらしい」ので実施すべきですが、未来では間違いかもしれません。都度振り返り、効果を確認し、結果をみながら継続したり時には止めたり方法を変えたりすることが必要です。

では誰がするのか? それは私であり、あなたです。我々が関心を持つことが一番重要なんです。冒頭申した通り、山野部も都市部も繋がっているんです。

どうしたら継続可能で住みよい暮らしが出来るか考えること、議論すること、実施し顧みること、良さそうなことは実施してみること真似してみること。明日からほんの10秒だけでいいので、森のことを考える時間をいただけませんか。

あとこれは宣伝ですが、私は鳥獣被害対策コーディネーターという資格も持っています。

これは野生動物保護管理事務所という野生動物の研究分野において日本トップレベルの事務所が実施する研修を修了したものに与えれます。農地ではなく主に森林部門ですが、鳥獣の防除や捕獲について多く知識を有しています。

お仕事ください(切実)。

Writer

この記事を書いた人

オクタマニア

オクタマニアっす。 奥多摩町地域おこし協力隊として奥多摩町に移住してきました。 奥多摩で楽しい生活を満喫しています。

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