Diary

おくたま日記

2019年09月24日

奥多摩暮らしの真のラスボス、ハチ。その生態と対処法とは

奥多摩暮らしの難点として、虫が出るということを何度か記事にしてきた。

初めにゲジゲジとの衝撃の出会いを経験し、その後にムカデこそが本当の脅威であることを悟り、さらには彼らの住みかとなるくさむらがあっという間に増殖するという話もさせてもらった。

それからというもの、奥多摩暮らしのラスボスはムカデだと信じていた。そのムカデへの対処に慣れるにつれ、もう怖いものなんてないと思っていた。

だが違った。ムカデなんて所詮はドラクエ3のバラモスみたいなもので、奥多摩にはバラモスより遥かに恐ろしい大魔王ゾーマがいるのだ。それがハチである。

ということで今回は、奥多摩生活における真のラスボス、ハチについて語らせてもらおう。

なお過去の虫関連エピソードは以下からご確認いただきたい。

第壱話:「ゲジ、襲来」
第弐話:「見知らぬ、節足」
第参話:「刈らない、雑草」

 

そして今、本当の恐怖が始まる……。

言いたかっただけ

身近に潜むハチの恐怖

9月の初旬だった。その日は朝から天気が良く、僕は朝食後に庭の雑草を刈ることにした。最後に草刈りをしたのは去年の秋だろうか。庭の草は伸び放題で、大人の背丈をとうに越えていた。

そんな庭を通り抜けた奥にプロパンガスのボンベが置かれているものだから、ガス交換のたびに藪をかき分けていく業者さんは、よく考えたら非常にかわいそうだ。

ならばまずはガス業者さんの通り道を作ろうと思い、玄関脇からガスボンベにかけて草を刈り始め、その後30分ほどで草が山盛りになった。ハイジのベッドくらいの量だ。僕は汗だくになり、その日の作業はそこまでにした。

数日後、やはり天気の良い日に朝から草刈りをした。今度は公道に面した駐車場だ。そのあたりの雑草も軒並み大人の背丈を越えていて、茎も太いため、鎌を使って一本一本根元から刈り取っていった。

7割ほど刈り取ると、生い茂る雑草に覆われていた石垣の大部分が見えるようになった。中腰での作業のため腰が痛い。背伸びをしながら視線を上げた時、それは目に入った。

 

“WASP”が危ないハチで”BEE”は危なくないハチなんだって。知らなかった。

石垣の中程、ちょっとした窪みにぶら下がる逆お椀型の物体。大きさは握りこぶしくらい。ハチの巣だ……! しかも早朝だからか、ハチたちがまだ出動していない。巣の内部や表面をしきりに這い回っている。ハチの種類に詳しくはないけれど、どうやらアシナガバチみたいだ。

僕は雑草で隠れてしまっていた巣の存在に気付かず、20センチメートルの至近距離で草刈りをしていた。超、超危なかった!

アシナガバチはこちらからちょっかいを出さない限り攻撃してくることは稀らしいけど、ここは玄関への出入りで頻繁に通る場所なので流石に怖い。すぐに家にある最強の殺虫剤を使って駆除した。少しだけ胸が痛んだ。

スズメバチだって珍しくないぞ

実際のスズメバチとは色や風合いが異なる場合があります

時間的には前後するけれど、昨年の秋のこと。自宅のとある部屋に入ると虫の羽音が聞こえた。随分大きい、重厚感のある羽音だ。部屋を見回すと、奥の壁にスズメバチが止まっているではないか。しかも2匹。

当時その部屋は網戸が破れていて、しかしネコにおしっこをされてしまって部屋が臭かったので、窓を少しだけ開けたままにしていた。その隙間からまんまと侵入されてしまったのだろう。

その時はハチ用の殺虫剤がなかったのでG用のものを使用したが、幸い問題なく駆除することができた。

さらにこれは最近の出来事だが、外出しようと思って家を出たら、玄関のすぐ外の通路のど真ん中にスズメバチがいて、出かけられなくなったこともあった。

落ち葉の上でモゾモゾ動いている特大のスズメバチで、これから巣作りを始める女王バチかとも思われた。なのでこの場で駆除しなければと思ったものの、何も道具がない。ならばいっそ地面にいるうちに踏んづけてしまおうと近寄った瞬間、スズメバチがゆっくりと離陸し、わずかにこちらへ進んだ。

まあ全力で逃げたよね。

いったん家の中に戻って、ややあってから外に出たらハチはいなくなっていたけど、あれを逃がしたのはマズかったんじゃあないかと、いまだに気にかかっている。後から調べてみたらハチの営巣時期は春で、この接近遭遇は夏の後半だったので大丈夫だとは思うが、いなくなってもまだ怖い。

とにかく、この瞬間の恐怖はムカデなんか比べ物にならなかった。だってムカデは飛ばないもの。ムカデに噛まれてもすげえ痛くてすげえ腫れるだけだけど(※)、スズメバチに刺されたら最悪死ぬもんね。それはもう、BB弾と実弾くらいの差があるわけで。

※ムカデでも死亡例があります。

ハチとの遭遇に備え、知識と対処法を身に付けよう

このように、奥多摩みたいな自然に囲まれた環境に身を置いているとハチとの遭遇は珍しくもなんともない。そんな場所で暮らすためには、最低限のハチの種類や習性を知り、殺虫剤なども備えておく必要がある。

ここからはネットで調べたハチの情報を書き連ねるので、みなさんも一緒に勉強しよう。例によって写真は一切載せないので、姿を知っておきたい場合は各自で検索していただきたい。

ハチの生態

春先に女王バチが巣を作り、夏ごろまでに働きバチが増える。夏から秋にかけて活発に活動、繁殖し、冬が来る前に活動を終える。一日の中では、朝出動して、餌を探し、日没後に巣に帰る。

ハチの種類

スズメバチ

黄色くて黒い縞模様。腰がくびれている。体長は種類にもよるが2~3センチほど。土中や樹洞、軒下、屋根裏など、様々な場所に巣を作る。2回目以降に刺された際の免疫反応で起きるアナフィラキシーショックで死に至ることも。そうでなくとも一撃死の可能性もある。

主に巣に近づく者に対して攻撃的になる。スズメバチが周りを飛び回ったりカチカチと警戒音を出すのは「オイ人間、てめえこっち来んじゃあねえよ調子コイてんとやっちまうぞ?」という意思表示であり、とても危険。ミツバチやアシナガバチの巣を襲撃して幼虫を食べちゃうハチ界隈の頂点である。

アシナガバチ

腰がくびれててスズメバチと似ているが一回り小さい。アシナガバチの中でも種類によって色や大きさに多少の違いがある。人家の近くにも巣を作る。巣の形はお椀を逆さにしたような、いかにもハチの巣って感じの形。

攻撃性も毒性もスズメバチ程ではないが、アナフィラキシーショックは起きるので2度目刺されたらスズメバチ同様に危険らしい。

蛾や蝶の幼虫を餌としているので、農業的には益虫でもある。無農薬栽培の強い味方。人家に巣が作られた場合はもちろん危険。

ミツバチ

ちっちゃくてカワイイ。滅多なことでは攻撃してこない、お花の蜜が大好きなスイーツ昆虫。花の蜜を集めながら受粉の助けにもなっている益虫オブ益虫。

超大群で生活しているのでパッと見怖いが、基本的に駆除の対象ではない。

ハチの対処法

言いたかっただけ

駆除するタイミング

ハチの駆除には適切なタイミングがある。日中はハチが活発に活動しているので危険だし、巣にいないのできちんと駆除できない。なので夜から早朝にかけての、ハチがみんな巣にいる時間帯を狙って駆除するのが正解らしい。ハチ専用の殺虫剤を使って巣ごと駆除するのだ。ただしスズメバチの場合は危険すぎるので専門家にお願いしたほうがいいと思う。

ハチ用の殺虫剤は巣作りを防ぐ効果もあるので、軒下とか怪しいところにあらかじめまいておくとよい。木酢液をまくのも巣作り防止効果があるらしい。また、屋根裏にスズメバチの巣が……っていうのはよく聞く話なので、そういった場所に隙間がないか確認して、あれば塞いでおく必要がある。

なおハチ用殺虫剤の威力は他の殺虫剤とは格が違う。安全な場所から噴射できるように飛距離が10メートルを超えるし、吹き出す液の量も凄い。なので屋内で使用するのは控えたほうがいい。部屋が毒液でベタベタになってしまう。あくまでも巣に対して使用するものだと認識しておこう。

遭遇しても冷静に

ハチに遭遇しても慌ててはいけない。大声を出したり急激な動きをすると、ハチのほうも驚いて攻撃モードに入る恐れがあるからだ。静かにゆっくりと距離をとることが大切なのだ。

スズメバチが攻撃をするのは次の3つの場合。(1)餌をとるため、(2)巣を防衛するため、(3)餌場を守るため。つまりスズメバチのテリトリーに侵入しなければほぼ安全ということだ。テリトリーの広さは数メートルから十数メートルと、ハチの種類によって幅があるので注意が必要。

ハチは真下に死角があるようで、ハチの視界から逃れるために頭を低くするとか直角に曲がるとかの逃げ方が有効らしい。

ハチが家に入ってきたら

ちょっと窓を開けた瞬間に、取り込んだ洗濯物と一緒に――。いろいろなシチュエーションでハチが屋内に迷い込むことがある。そんな時もできるだけハチを刺激しないようにしたい。ハチにも走光性があるので、部屋の明かりを消して、窓を開け、明るい屋外へ自然に出ていくのを待つのがいい。

どうしても出ていかない場合は殺虫剤などを使うことになるが、絶対に不意打ちで一撃で仕留めることが肝要。しくじって攻撃モードに入ったら正面切ってのガチンコ勝負になってしまう。そうなったら……ハチにはちょっと勝てる気がしない。

ハチは隣人。隣人にはリスペクトを

この環境でハチがいないと思うほうがおかしい

奥多摩にはハチが出る。都会よりもずっと。だからといってむやみに恐れることはなく、ハチのことを知り、正しい備えと対処をすればよいのだ。

ハチは巣を作るので、そこにさえ気を配っておけば家から遠ざけることも可能である。その点ではムカデよりもマシなのかもしれない。

ムカデの記事でも書いたけど、奥多摩で暮らすということは虫や野生動物の領域で暮らすということだ。そういう、命の気配が身近にあることが田舎の良いところでもある。

家にハチの巣が作られたら危険だから駆除はするけど、自然に対する理解と敬意は忘れないようにしていこうと思った。

Writer

この記事を書いた人

スー

2015年、なんとな~く奥多摩に移住。現在、妻の営む整体サロンの片隅で、電動バイクレンタルショップをこっそり営業中。少年ジャンプと科捜研の女がイキガイのシガナイ中年。

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