Diary

おくたま日記

2019年04月27日

ゲジゲジ登場!そして平和は破られた

あの日々はもう戻らない……

それは穏やかな昼下がりだった。外ではシトシトと雨が降っていた。窓を開けると、湿った風の匂いがした。今日は、少し前から保険の営業をするようになった友人が訪れていて、彼女に向かって妻が何かを話している。僕たちは居間でコタツを囲んで談笑していた。

なんの拍子だったか、視線を落とすと、日焼けした畳の上にふと動くものがあった。どこかのスナックでもらってきたような100円ライターより一回り大きい。細いこげ茶色の体からは無数のおびただしい数の長い脚が延び、一見するとどちらが前かも分からない。

その存在を妻に知らせると、彼女は振り返って悲鳴をあげた……。

君はゲジゲジを知っているか

結論から話せば、我が家にゲジゲジが出たのだ。

ゲジゲジ。名前くらいは聞いたことがあるだろうか。都会ではあまり馴染みがないと思う。ゲジゲジというのは無数の脚を持つ節足動物の一種で、ムカデの仲間に分類されている。

ただし、前述したように脚は非常に長く、姿かたちや動きはムカデとは全く似ていない。共通しているのは小型の昆虫などを捕食する肉食動物であるという点くらいだろうか。

主に屋外の、落ち葉や石の下など物陰に生息しており、街中で見かけることはまずないだろう。時として人家に入り込むこともある。尚、その外見は極めてグロテスクであるため、この記事には画像を載せることはしない。気になる場合は各々で検索して確認してほしい。

動きは素早く、長い脚を使って滑るように移動する。重量を感じさせないその滑らかな静歩行も、グロテスクなイメージを加速させる。

隙間だらけの我が家

さて、このグロテスクな節足動物だが、奥多摩のような田舎では実にポピュラーな存在だ。住宅の周囲に山林や畑があることが当たり前だから、生息できる場所が多いし餌となる虫も多い。夜行性ゆえに昼間は隠れていて出てこないが、一度日が落ちれば、そこかしこから姿を現す事だろう。

加えて、最大の問題は我が家の気密性の低さにある。築70年の古民家だけあって、あちらこちらが歪み、傷んでいる。そうでなくても、日本家屋というものは元来気密性を追求していない。湿度の高い日本の気候風土の中で快適に過ごすため、通気性を高める構造になっているのだ。

従って、我が家には至る所に隙間がある。例えば、居間にある押入れの中の床などは、ライトで照らせば床下が見えるほどにスカスカだ。

床下は、通常日が当たらない。全体が物陰のようなものだ。つまりゲジゲジが暮らしている場所だと言える。そこから室内へ通じる隙間が無数にあるのだから、ゲジゲジにとってはどこからでも入り放題の家ということだろう。

いや、むしろシームレスな空間なのか。だから今回も、ほんの軽い気持ちで侵入したに違いない。

こういうところに潜んでいる

何も悪い事なんかしてない

外見の悪さから、近年ではしばしば駆除の対象とされているゲジゲジ。しかしよく考えてほしい。このゲジゲジが、いったい何をしたというのか。

ゲジゲジが人を刺すことはまずない。毒を持っているが、人間に影響があるほど強くもない。体は清潔で、ハエやゴキブリのように病原菌を媒介することもない。いったい全体、何が悪いっていうんだ。

悪いどころか、逆なのだ。先に、ゲジゲジは小型の昆虫を捕食すると述べた。その昆虫とは何か。それを知ったら、あなたもゲジゲジへの評価を改めざるを得ないだろう。

ゲジゲジが捕食する昆虫、それは、ゴキブリだ。ゲジゲジはゴキブリをゴキブリ以上のスピードで捕獲し、キレイに食べてしまう。ゴキブリの天敵なのだ。ゴキブリだけではない。ゲジゲジはノミやシロアリも食べる。人間にとって害のある虫を端から食べつくす、益虫だ。嫌ったらかわいそうではないか。

妻はゲジを愛さない

そんな素晴らしいゲジゲジのことを、妻は受け入れてくれない。いや、ゲジゲジのよさを知ってはいるのだが、その功績を認めつつも、どうしても好きになれずにいるのだ。要するに、生理的に受け付けないのだという。信じられない。

よく考えてみていただきたい。ゲジゲジを嫌う人たちよ。ゲジゲジを駆除するということは、ゴキブリを助けるということだ。天敵がいなくなれば奴らの天下ではないか。本当にそれでいいのだろうか。

我が家では、ゲジゲジは決して殺さない。しかし、そこかしこを音もなく這い回られては問題も生ずる。意図せず潰してしまう危険があるからだ。仕方がないので、見かけたらそっと外へ出すことにしている。妻もそれで許してくれた。

ゲジゲジはダークヒーローだ!

現物はこんなに可愛くない。

ゲジゲジはグロテスクだ。ゲジゲジは忌み嫌われている。だけど、ゲジゲジは、悪を砕く。闇に生き、人知れず闘い、獲物を狩り尽くすと人知れず去っていく。

クールだ。まるでアメコミに登場するダークヒーローそのものではないか!

そんなゲジゲジをあなたはどう感じるだろうか。共存できるのか、できないのか。さあ選べ!奥多摩で暮らすためには、避けては通れない問題だ。

ちなみに、おくたま暮らしのダークヒーローとして他にもアシダカグモなどがいるが、それはまた別のお話……。

Writer

この記事を書いた人

スー

2015年、なんとな~く奥多摩に移住。現在、妻の営む整体サロンの片隅で、電動バイクレンタルショップをこっそり営業中。少年ジャンプと科捜研の女がイキガイのシガナイ中年。

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